カテゴリー「書籍・雑誌」の45件の記事

2015年4月19日 (日)

星籠の海/島田荘司

Photo

2013年、講談社、上巻:443ページ、下巻:423ページ。
図書館で待ち無し。

瀬戸内海、松山沖に浮かぶ興居島の湾に、連続して死体が流れ着くという奇妙な事件の調査を依頼された御手洗潔は、石岡和己とともに瀬戸内へ。解決への鍵を求めて訪れた場所は、古代より栄えた「潮待ちの港」、鞆(とも)の町を擁する広島県の福山市だった。しかし、御手洗たちの到着直後に発生した死体遺棄事件にはじまり、鞆もまた不穏な気配を漂わせていた。これは瀬戸内を揺るがす一大事の兆しなのか!?古からの港町に拡がる不穏な団体の影、怪事件の続く「時計仕掛けの海」に御手洗潔が挑む!

久しぶりの御手洗シリーズ。手に取るのに少し覚悟を要する分厚い上下巻だったけど、相変わらずの読みやすさで3日で読破。瀬戸内海を舞台に、歴史、宗教、薬物、原発、イジメなどを絡めた謎を、一を聞いて十を知る天才・御手洗が挑む。往年の作品のようなスケールと奇想天外さは若干物足りなさを感じるけど、切腹女の唖然とする行動や助教授の変心ぶり、登場人物の言葉遣いは、ああ、島田作品だ、と安心する。忽那と少年の話をもうちょっと読みたかった。瀬戸内海に行ってみたくなった。

2015年2月12日 (木)

球界消滅/本城 雅人

Photo

2015年、文春文庫、565ページ。

弱小球団、横浜ベイズの副GM大野は、独自のセイバーメトリクス理論で、チームを見事に立ち直らせる。だが、一方で、球界全体を揺るがす途方もない計画が進行、大野はその渦中に投げ込まれる。もし、プロ野球が4球団に統合されてMLBに吸収合併されたら?豊富なデータに裏打ちされた戦慄のシナリオ。

フィクションとはいえ、ほぼ実在の球団と人物がイメージできるので、ドキュメンタリーを読んでるようでおもしろかった。日本の12球団を4つに統合し、韓国、台湾、中国を交えてアジア8チームがメジャーリーグ参入。アジアとアメリカの移動時間を考えれば不可能かもしれないけど、わりと細かいところまで練っている。粗を探せばいくらでもでてくるだろうけど、まずはこの本をたたき台に、こういう構想があるという事を多くの人に広めてほしい。

巨人戦さえ民放ではやらなくなってしまったし、プロ野球を見る試合数も年々減ってきているので、ぜひこの構想を近い将来実現させてほしい。今のプロ野球を牛耳ってる頭堅いじじい達は最初から聞く耳持たないだろうけど。できるものなら、アジア以外にも中南米も交えて5チーム×4地区×2リーグの全40チームにして、真のワールドシリーズを見たい。WBCのような緊張感のある試合を毎年見れたら最高じゃないか!

2014年7月14日 (月)

灰色の虹/貫井徳郎

Photo

2013年、新潮文庫、716ページ。

身に覚えのない殺人の罪で、職場も家族も日常も失った男は、復讐を決意した。刑事、検事、弁護士――。七年前、無自覚に冤罪を作り出した者たちが次々に殺されていく。だが男の行方は杳として知れず、宙に消えたかのように犯行現場から逃れる。彼が求めたものは何か。次の標的は誰か。あまりに悲しく予想外の結末とは。

事件を裁いた刑事、検事、弁護士、裁判官、目撃者、そして被告人、それぞれの目線でそれぞれの心情が交互に描かれていく。あまりにも切ない、救われない重いテーマだけど、冤罪はこうして作られる、という見本のようなストーリー。2時間くらいの映画では味わえない読み応えがあった。明らかにされない謎も残るけど、この作品の本質はそこじゃない。

もし自分が被疑者の立場で、あんな風に刑事に脅されたら、「それでもボクはやってない!」と言い続けられるだろうか。楽になりたい、という被疑者の心情が痛いほど伝わってきた。どんなに優秀な裁判官や検事でも、目撃者、刑事、弁護士のどこかに穴があれば冤罪を生む。世界一頭の良い人でも、事件を100%正しく裁く事はおそらく不可能だろう。現場をその目で見ていない限りは。

2014年6月14日 (土)

首折り男のための協奏曲/伊坂幸太郎

51vtnejolll_sl500_aa300_

2014年、新潮社、315ページ。
図書館で半年待ち。

首折り男は首を折り、黒澤は物を盗み、小説家は物語を紡ぎ、あなたはこの本を貪り読む。
胸元えぐる豪速球から消える魔球まで、出し惜しみなく投じられた「ネタ」の数々! 「首折り男」に驚嘆し、「恋」に惑って「怪談」に震え「合コン」では泣き笑い。黒澤を「悪意」が襲い、「クワガタ」は覗き見され、父は子のため「復讐者」になる。技巧と趣向が奇跡的に融合した七つの物語を収める、贅沢すぎる連作集。

なんかおどろおどろしいタイトルだし、実際に被害者は首を折られてるんだけど、全然恐い感じは無く、伊坂幸太郎らしい会話中心のはなしでおもしろかった。最後の「合コンの話」は読み始めはつまらなそうだったけど、最後の最後にやられた。爽やかに。その仕事は放り出しちゃダメだろw

2013年12月22日 (日)

死神の浮力/伊坂幸太郎

Photo

2013年、文藝春秋、436ページ。
図書館で4ヶ月待ち。

一年前、一人の少女が殺された。犯人として逮捕されたのは近所に住む二十七歳の男性、本城崇。彼は証拠不十分により一審で無罪判決を受けるが、被害者の両親・山野辺夫妻は本城が犯人だという事を知っていた。人生をかけて娘の仇を討つ決心をした山野辺夫妻の前に、死神の千葉が現れる。

被害者の父・山野辺遼が作家という事で、ずっと伊坂幸太郎に重ねて読んでた。伊坂幸太郎ってこういう人なんじゃないだろうかと。少なからず性格似てそう。犯人は恐ろしいサイコパスなのに、すっとぼけた千葉のおかげか、あまり重い雰囲気や危機感は感じられない。もともと、重い話にユーモアをもたせておもしろくするのが伊坂作品なんだろうけど。

長編のわりには展開が少なくて、伏線の回収も少なく、爽快感もなかった。短編てあんまり好きじゃないけど、このシリーズは短編の前作「死神の精度」の方がおもしろかった。

2013年10月28日 (月)

沈黙の町で/奥田英朗

Photo

2013年、朝日新聞出版、512ページ。
図書館で3週間待ち。

中学二年生の名倉祐一が部室の屋上から転落し、死亡した。屋上には五人の足跡が残されていた。事故か?自殺か?それとも…。やがて祐一がいじめを受けていたことが明らかになり、同級生二人が逮捕、二人が補導される。閑静な地方都市で起きた一人の中学生の死をめぐり、静かな波紋がひろがっていく。被害者家族や加害者とされる少年とその親、学校、警察などさまざまな視点から描き出される長篇サスペンス。

序盤は加害者の少年、逮捕・補導された少年達の人柄もわからず、少年達は沈黙を守り、事件は一向に進展しない。ドキュメントを読んでるような感じ。中盤から少年達の過去の話が挟まれ、次第に事件の経緯が見えてくる。最後には事実らしき事も描かれている。いろんな登場人物の目線から描かれているけど、加害者の目線からは描かれていないので、結局真実は加害者本人にしかわからない。加害者の少年が徹底して嫌な奴に描かれているがやるせない。

いじめと戦争は、この世の中から無くならないのだろうか。いじめられる役を当番制にして、毎日その1人をクラス全員でいじめ、それを一周したらいじめは無くならないだろうか。

2013年9月 1日 (日)

ガソリン生活/伊坂幸太郎

Photo

2013年、朝日新聞出版、413ページ。
図書館で4ヶ月待ち。

大学生の望月良夫は愛車のデミオ運転中に、偶然会った女優の翠を目的地へ送り届けることに。だが翌日、翠は事故死する。本当に事故だったのか?良夫とその弟で大人びた小学5年生の亨は、翠を追いかけ回していた芸能記者・玉田と知り合い、事件に首を突っ込み始める。姉、母まで望月一家が巻き込まれて、謎は広がるばかり。

猫の次は車目線のはなし。ほのぼのとしながらも、ミステリー要素もありおもしろかった。ちゃんと伏線は回収されるし、愛すべきキャラクター達に、車の心理がうまく描かれている。自分の意思ではどうにもならない車の気持ちがなんかリアル。給油ランプ付いた時はもうお腹ペコペコなんだろうな。イジメ問題にも軽くメスを入れている。エピローグもほんわかして良かった。"オー!ファーザー"一家も登場するけどセリフは無し。

あんまり車にこだわりとかないので、移動手段の一つとしか思ってなかったけど、駐車する時はなるべく車の多いところに停めてあげよう。

2013年8月15日 (木)

夢幻花/東野圭吾

Photo

2013年、PHP研究所、371ページ。
図書館で3ヶ月待ち。

独り暮らしをしていた老人・秋山周治が何者かに殺された。遺体の第一発見者は孫娘の梨乃。梨乃は祖父の死後、庭から消えた黄色い花のことが気にかかり、ブログにアップする。ブログを見て近づいてきたのが、警察庁に勤務する蒲生要介。その弟・蒼太と知り合った梨乃は、蒼太とともに、事件の真相と黄色い花の謎解明に向けて動き出す。西荻窪署の刑事・早瀬らも、事件の謎を追うが、そこには別の思いもあった。

江戸時代には存在したという黄色いアサガオが何故絶滅したのか?それだけのテーマで長編を書き上げてしまう。相変わらず読みやすく話もよくできてる。全く関係無さそうなプロローグでの惨殺事件が後半に全てつながる。犯人もまさかのところから出てくるし。ただ、毒がないというか、登場人物に悪党がいないので物足りなさも。原発問題も無理矢理ねじ込んだっぽいけど、「天空の蜂」は読み応えあった。

2013年7月27日 (土)

色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年/村上 春樹

41naeswpuwl_sl500_aa300_

2013年、文藝春秋、370ページ。
図書館で3ヶ月待ち。

多崎つくるは、木元沙羅と交際中だが、なかなか関係は進展しない。その原因として沙羅は、高校時代の友人から絶交されたことについてのわだかまりがあるのではないかと考え、つくる自身が当時の友人たちに会って直接話をすることで、事態を打開するように勧める。そこでつくるは、友人たちのもとを一人ずつ訪ね、絶交の真意を知る。そのうえで、あらたに沙羅との関係を進展させようと決意する。

清潔で、野菜を食べ、牛乳を飲み、定期的に運動をし、テレビは見ない、質素な生活を好む、村上作品のいつもの感じの主人公。いつもどおりの浮世離れしたセリフに世界観。ふーん、と思いながら淡々と読んでたけど、クロに会いに行くところは良かった。別れ際はちょっと泣けた。

2013年6月16日 (日)

八月からの手紙/堂場瞬一

Photo

2013年、講談社文庫、450ページ。

1948年、戦後間もない東京で野球の力を信じた男たちがいた。復興への期待を胸に、「日本リーグ」を立ち上げようと奔走する日系二世の元ピッチャー矢尾。戦時中、カリフォルニアの収容所で絶望の日々を送る彼を支えたのは、ニグロリーグのスター選手ギブソンとの友情だった。

ジャッキー・ロビンソンがメジャーデビューする直前、「黒いベーブ・ルース」と呼ばれたニグロリーグの強打者ジョン・ギブソンと、肩の故障から一年で現役を退いた矢尾健太郎の、たった一度の真剣勝負から育まれた、人種を超えた熱い友情の物語。伝説の投手サッチェル・ペイジもギブソンの同僚で登場。切ないけど、後味は悪くない結末。この人の作品は、野球小説だけは全部読んでるけど、どれもおもしろい。